学会長挨拶
昨年9月の第47回大会において会員による直接投票により会長に選出され、日本原価計算研究学会第13代会長に就任しました。大変遅くなりましたが、就任から1年が経過したいま、会長就任にあたっての所信表明およびこの1年間で行ったことを述べて会長挨拶に代えさせていただきます。
本学会は、1975年に創立されました。「原価計算の理論および実践の研究を促進し、原価計算の進歩と発展に貢献するとともに、会員相互の交流をはかることを目的」としております。今年で創立48年目、2年後の2024年には50周年を迎えます。50周年に向けて、本学会の目的をより高いレベルで達成することが、会長としての使命です。そのために、本学会の特徴をいかした学会運営に努めてまいります。
日本原価計算研究学会40周年記念号によれば、創立当時は実務家会員の割合が非常に高く、理事会のメンバーも大学の研究者が半分、実務家が半分という構成でした。「広い意味の会計学の中に含まれる原価計算を抽出して、学者と実務家とを広く会員として参加させ、学会活動を活発に行わせることに狙いがあった」といいます。こうした創立当初の考え方を継承してきたことが本学会の大きな特徴であると考えております。設立の翌年1976年からは関東部会と関西部会を継続して開催してまいりました。 企業にご協力いただき、その多くは企業の本社や工場で開催されました。第5代会長小林哲夫先生の時代には、学会の活性化を企図して、新規会員とくに実務家会員の増大をはかるために「産専学共同フォーラム」を開催するようになり、これが現在の産学連携コストフォーラムへと進化しました。第12代会長松尾貴巳先生の時代には、実務家によるユニークな事例研究や学術・実践的に有用な啓発的な論文の掲載を企図したオンライン学会誌『経営会計レビュー』が創刊されました。
ところで、小林会長時代には、学会の活性化をはかるため、廣本敏郎研究担当常任理事(当時)をリーダーとするもう1つのプロジェクトが発足しました。このプロジェクトでは、会員同士の研究交流をする場としてのインターネットの活用を目的として、「学会ホームページ」「会員データベース検索システム」「メーリングリスト」の開設という、当時としては画期的な計画が立てられ、尾畑裕幹事(当時)が他学会に先駆けて「学会ホームページ」を開設されました。当時の意図とは異なりますが、本学会の事業活動の案内等において「メーリングリスト」を積極的に活用していること、学会のウェブサイトのなかに「会員のページ」を設けていることは、会員の皆様がご存じの通りです。
本学会は、学会誌『原価計算研究』の質向上にも長年力を注いできました。第9代会長廣本敏郎先生の時代には、初めて常任理事会から独立した別個の組織として学会誌編集委員会が組織化されて、学会誌編集委員会運営細則、投稿規程、レフリー制制度運用基準、執筆要項等の規程類が整備されました。本学会誌は、会計関連の他の学会誌・機関誌との比較において、投稿論文数、掲載論文数、掲載論文の質等において勝るとも劣らない学会誌として高く評価されています。
さて、以上のような特徴を備えた学会運営がなされてきましたが、本学会は特定の役員に依存しがちな体質をもち、その結果、事業活動が遅延する等さまざまな問題を抱えています。会員数も、ピーク時の個人会員は522名(2004年9月12日付)、賛助会員14社(2002年7月31日付)と比較して減少傾向が続いております。こうした背景から、デジタルを活用した問題解決に取り組むべく、所信表明として以下の5つの方針を掲げました。
① 効率的な業務遂行に向けた組織変革の推進
② 会員サービスと広報の充実化、会員数(とくに実務家と賛助会員)の増加
③ オンライン学会誌『経営会計レビュー』を軌道に乗せる
④ 50周年記念事業を通じた本学会のプレゼンス向上
⑤ 学会誌『原価計算研究』編集業務の効率化(投稿・査読プロセスのデジタル化による編集委員会の負担軽減)
各方針に対して実行してきたことはおおよそ次の通りです。
①正副会長による月次定例会議の開催、委員会の新設(倫理委員会、ホームページ管理委員会、機関誌等検討委員会)と各委員会の活動始動。会員管理に関して総務担当と会長間の連携強化。
②役員の職務として広報担当とデジタル化推進を新設。学会誌『経営会計レビュー』のJ-Stage登載を皮切りに外注。
③J-Stageへの利用申込、ISSNの正式登録、編集委員会運営細則等の改正と編集委員会の充実、学会HPでの広報等。
④50周年記念事業委員会の新設と活動始動。
⑤デジタル化推進担当を中心にデジタル化の方法を検討、常任理事会にてEM(Editorial Manager)の導入を承認。
残り2年間、役員の方々のご協力のもと、全力を尽くしたいと考えておりますので、会員の皆様のご協力とご指導を心よりお願い申し上げる次第です。会員の皆様におかれましては、本学会の活動に対するご要望やご意見を、積極的に学会役員までお寄せくださいますようお願いいたします。
2022年9月吉日
日本原価計算研究学会第13代会長 挽 文子